私立聖ブルージョークス女学院2
「え?ヨハネってキリストの弟子ですよね。確か12使徒とかの一人。どうして一人だけイエス様やマリア様と並んで別格なんですか?」
「神津先生がおっしゃっているのは使徒ヨハネの方でしょう?そちらではなく、『洗礼者ヨハネ』という方が別にいらっしゃったのです。修行の上ではイエス様の先輩にあたられる方で、イエス様に洗礼を授けたほどの聖者なのです。ですから名前は同じでも、洗礼者ヨハネ様は別格なのですよ」
「へええ!あの、それで、そのハーブって何に効くんですか?」
「洗礼者ヨハネ様の誕生日の前日、つまりイブに、未婚の女性がそのハーブを枕の下に敷いて寝ると、夢の中に将来の夫の姿が現れるという俗信もあるのです。ほら、ここは年頃で当然未婚の若い女の子がたくさんおりますでしょ?こっそり摘んで行ってしまう事が昔から多いのですよ。それでこの時期になると、警戒も厳重に、というわけで。ああ、ほら、それがセントジョンズワートですわ」
そう言ってシスターは一つかみの草を摘んで環に渡した。
「沈静効果もありますから、先生もお使いになって下さい」
「え!でも、いいんですか。たった今、数に限りがあるから、とおっしゃっていた物なのでは?」
「いいえ、先生には先日おいしいお菓子をいただきましたから」
「あ、いえ、あれは出張のついでで皆さんにも……それに私そんなつもりでは……」
「まあまあ、遠慮はご無用です」
「そ、そうですか、ではありがたくいただいておきます」
「昔から言いますでしょ。『魚心あれば下心』って」
「……あ、あのう、シスター。上げ足を取るつもりはないんですが、それをおっしゃるなら『魚心あれば水心』なのでは?」
「え?あら、そうだったかしら」
そして再びドアの外へ出てシスターにもう一度礼を言い、去り際に環はふと思いついて振り返ってシスターに尋ねた。
「あのう、ひょっとしてシスターは、この学院の卒業生でいらっしゃいますか?」
「あら!よくお分かりになりましたわね。それが何か?」
「あ、いえ、何でもないんです。お世話様でした」
そしてシスターから充分遠ざかった所で環は思わずつぶやいた。
「やっぱり、ね」
「神津先生がおっしゃっているのは使徒ヨハネの方でしょう?そちらではなく、『洗礼者ヨハネ』という方が別にいらっしゃったのです。修行の上ではイエス様の先輩にあたられる方で、イエス様に洗礼を授けたほどの聖者なのです。ですから名前は同じでも、洗礼者ヨハネ様は別格なのですよ」
「へええ!あの、それで、そのハーブって何に効くんですか?」
「洗礼者ヨハネ様の誕生日の前日、つまりイブに、未婚の女性がそのハーブを枕の下に敷いて寝ると、夢の中に将来の夫の姿が現れるという俗信もあるのです。ほら、ここは年頃で当然未婚の若い女の子がたくさんおりますでしょ?こっそり摘んで行ってしまう事が昔から多いのですよ。それでこの時期になると、警戒も厳重に、というわけで。ああ、ほら、それがセントジョンズワートですわ」
そう言ってシスターは一つかみの草を摘んで環に渡した。
「沈静効果もありますから、先生もお使いになって下さい」
「え!でも、いいんですか。たった今、数に限りがあるから、とおっしゃっていた物なのでは?」
「いいえ、先生には先日おいしいお菓子をいただきましたから」
「あ、いえ、あれは出張のついでで皆さんにも……それに私そんなつもりでは……」
「まあまあ、遠慮はご無用です」
「そ、そうですか、ではありがたくいただいておきます」
「昔から言いますでしょ。『魚心あれば下心』って」
「……あ、あのう、シスター。上げ足を取るつもりはないんですが、それをおっしゃるなら『魚心あれば水心』なのでは?」
「え?あら、そうだったかしら」
そして再びドアの外へ出てシスターにもう一度礼を言い、去り際に環はふと思いついて振り返ってシスターに尋ねた。
「あのう、ひょっとしてシスターは、この学院の卒業生でいらっしゃいますか?」
「あら!よくお分かりになりましたわね。それが何か?」
「あ、いえ、何でもないんです。お世話様でした」
そしてシスターから充分遠ざかった所で環は思わずつぶやいた。
「やっぱり、ね」