私立聖ブルージョークス女学院2
 その高校までは車で十分とかからない場所にあった。カトリック系のいわゆるミッションスクールの私立女子校で、地元ではお嬢様学校として有名だと聞いている。
 校内には荘厳な形のチャペルまである、レンガ造りの校舎が並ぶ、いかにもキリスト教系の上品そうな学校だ。その名も「聖ブルージョークス女学院」。「聖」と書いて「セント」と読む。
 だが、雰囲気にはだまされないぞ、と環は心の中で思っていた。環の大学の教育学部には女子校出身者が多く、その女子校特有の無神経さには在学中さんざんムカつく思いをさせられてきたからだ。というわけで、環は女子校とその生徒に対しては根深い偏見を抱いている。
 特に高校ともなれば、男が周りにいない分、過剰に色気づいたガキどもがエッチな妄想で頭をパンパンに膨らませているに決まっている。そんな学校に赴任した片山左京の事を内心心配していたのだが、彼は特に悪影響を受けている様子はなかったので環は少しほっとした。
 いかにも好々爺然とした校長にあいさつを済ませ、環は綾瀬という少し年上の先輩女教師に連れられて校内の敷地にある学生寮に行った。この学校では生徒の3分の1ほどが寮に入っていて、環は寮監補佐をする事になっていた。廊下を歩きながら綾瀬先生が話しかけてきた。
「新任の先生には寮監補佐をしていただくのを慣例にしようという事になってるのよ。去年は片山先生にもやっていただいたけど、男性だから校外のアパートから通ってもらわないといけなくて。女性の先生なら寮に住み込みでお願いできるからあたしも助かるわ。まあ、その分大変でしょうけど、よろしくね」
「あ、いえ、こちらこそ。よろしくお願いします」
 半分就職浪人の環には、住居費と食費が安くすむのはありがたかったが、正直生徒と同じ屋根の下で一年間暮らすのは気が重かった。
「それとこれも片山先生と同じで、神津先生には各クラブ活動の顧問補佐を月替わりでやっていただきます。他の学校に赴任しても役に立つわよ」
「あ、それはもう聞いてます。でも、あたしに務まるかしら?」
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