私立聖ブルージョークス女学院2
「それであなたの、いえ、あなたの友達というのは、何か家庭に深刻な問題でも抱えているのかしら」
「え?いえ全然。むしろあんな仲のいい家族は今どき珍しいと言われているぐらいで」
「だったら心配ないわ。何と言うか、その……そう、時間が解決してくれるわ、きっと。成長していく過程で、きっとそうなるわ」
「はあ……でも……ほんとに成長できるんでしょうか?」
 そう言って女生徒は視線を下ろしてしまい、環の胸元をじっと見つめるような姿勢になって黙り込んでしまった。い、いかん、もうひと押ししなければ、と環は焦った。
「大丈夫、できるわよ。男兄弟なんていつかは疎遠になるものだし」
「はいっ?」
 突然その女生徒は素っ頓狂な声を上げた。
「あの、もしかして、先生が言っていた『ブラコン』って、ブラザー・コンプレックスの事でしたか?」
「ええ、もちろんそうだけど?」
「あ、あははは……そうですよね、うん、時間が解決してくれますよね。あ、あの、ありがとうございました。ではあたしはこれで失礼します」
 そう言ってその女生徒は妙にソワソワした態度で大急ぎで部屋を出て行こうとする。環は何か釈然としない物を感じていた。ブラザー・コンプレックスの話でなかったとすると……
「あの、あなたが言ってた『ブラコン』の『ブラ』って何だったの?」
「あの、いえ、何でもないんです。おかげで解決しました、さようなら」
 その女生徒はそのまま大急ぎでドアを閉め、走って逃げて行く足音が遠ざかって行った。そのドアに向かって環は小声でつぶやいた。
「ええ、どうせあたしはAカップで、そんでもう成長しないわよ。悪かったわね!」
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