私立聖ブルージョークス女学院2
その夜は学校がある町の花火大会だった。学校の敷地は高台にあるので花火が良く見え、生徒と学校関係者に限り夜に校内に入って花火見物をする事が許可されていた。
とは言え夏休み中の事だし、寮の生徒も全員が親元に帰っているので、比較的近い所に住んでいる生徒が20人ほどやって来たに過ぎなかったが。
寮に住み込んでいる環と綾瀬先生も生徒の引率がてら校庭に出て花火を見る事にした。生徒の半分ほどは色鮮やかな浴衣姿だった。こうして見ると年相応の可憐な乙女という感じだな、と環は思った。
すると学校のチャペルに勤めるシスター5人もその場へやって来た。環はぺこりと頭を下げて一番年長のシスターに話しかけた。
「あら、お久しぶりです。みなさんも花火見物に?」
「ええ。シスターと言っても日本人には違いありませんし、夏の風物詩ですからね。ちょうど生神女就寝祭の斎(ものいみ)も終わりましたし」
「は?あの何ですか、そのなんとかの『ものいみ』って?」
「今日が聖母マリア様が人としての生を終えられた日、一般で言う命日だという事はご存じでしょう?」
「はい、それで登校日なんですよね」
「その前の二週間、つまり8月1日から14日までを生神女就寝祭の斎の期間と言って、一切のお祭り、祝い事、楽しみ事を避けるという習慣がありますの。昔はカトリックの国ではこの期間には結婚式とかはタブーでしたのよ。まあ、今ではカトリックの国でも一般の人はこだわりませんし、この学校はクリスチャン専用ではありませんから生徒に強制はいたしておりませんが」
「はあ、シスターというお仕事も大変なんですね。それでここのところ、チャペルからあまり外にお出にならなかったんですか?」
「ええ。でも晴れてそれも終わりましたので今夜ぐらい、お若い方たちに混じって楽しもうかと」
「まあ!それは大歓迎です。あ、あの辺りが良く見えるそうですよ」
とは言え夏休み中の事だし、寮の生徒も全員が親元に帰っているので、比較的近い所に住んでいる生徒が20人ほどやって来たに過ぎなかったが。
寮に住み込んでいる環と綾瀬先生も生徒の引率がてら校庭に出て花火を見る事にした。生徒の半分ほどは色鮮やかな浴衣姿だった。こうして見ると年相応の可憐な乙女という感じだな、と環は思った。
すると学校のチャペルに勤めるシスター5人もその場へやって来た。環はぺこりと頭を下げて一番年長のシスターに話しかけた。
「あら、お久しぶりです。みなさんも花火見物に?」
「ええ。シスターと言っても日本人には違いありませんし、夏の風物詩ですからね。ちょうど生神女就寝祭の斎(ものいみ)も終わりましたし」
「は?あの何ですか、そのなんとかの『ものいみ』って?」
「今日が聖母マリア様が人としての生を終えられた日、一般で言う命日だという事はご存じでしょう?」
「はい、それで登校日なんですよね」
「その前の二週間、つまり8月1日から14日までを生神女就寝祭の斎の期間と言って、一切のお祭り、祝い事、楽しみ事を避けるという習慣がありますの。昔はカトリックの国ではこの期間には結婚式とかはタブーでしたのよ。まあ、今ではカトリックの国でも一般の人はこだわりませんし、この学校はクリスチャン専用ではありませんから生徒に強制はいたしておりませんが」
「はあ、シスターというお仕事も大変なんですね。それでここのところ、チャペルからあまり外にお出にならなかったんですか?」
「ええ。でも晴れてそれも終わりましたので今夜ぐらい、お若い方たちに混じって楽しもうかと」
「まあ!それは大歓迎です。あ、あの辺りが良く見えるそうですよ」