私立聖ブルージョークス女学院2
 私立聖ブルージョークス女学院の修学旅行は2年生の10月に行われる。名うてのお嬢様私立だけあって、行先は毎年海外、今年はアメリカ西海岸だそうだ。もちろん環は同行しないが、入国審査の際に提出する英語の書類の書き方を生徒たちに指導するよう頼まれていた。
 名前、国籍、住所などを記入する英語の書類で、2年生のあるクラスのホームルームの時間を使って、まず一度自分たちで書かせてみた。一旦集めて環がざっと点検する。名前、国籍までは良かったが、案の定次の「SEX」の欄でほぼ全員が間違えていた。環はホワイトボードに「SEX」と書き、その横に大きく「性別」と書いた。
「これはこういう事の欄です。まったくもう、揃いも揃って『まだです』とは何ですか?あん!『一回だけ』って書いてるのは誰です?あたしだからいいけど、他の先生だったらひと騒動ですよ。はあい、注目。英語で男性は……」
 環はホワイトボードのまず「Male」それから「Female」と大書した。
「この頭文字を書けばいいの。あなたたちはMじゃないでしょ?」
 一度生徒たちに書類を返し、書きなおさせてもう一度集めて点検する。今度は35人中31人がちゃんと「F」と書いていた。
「まだ4人間違ってますね。ええと、いや、あのね、Mじゃないから、S,S,ドSとは何ですか?そういう趣味を書く所じゃないって、さっきから言ってるでしょ。それで最後は……こらああ!『L』とは何ですか?『L』とは!そういう事を書く欄じゃないって、言ってるでしょうが!」
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