私立聖ブルージョークス女学院2
環の予感は的中した。若菜がまたぞろ片山の靴箱に怪しげな封筒を押し込もうとしている現場を押さえ、生徒指導室に連れていく。封筒からは明らかに盗撮したとおぼしき若い女性のパンチラ写真やらが出て来た。
「あのね、九条院さん。いつかも言ったでしょ。何のためにこんな事を?」
「あ、いえ、今回はあたしのじゃなくて、ちゃんと大人の女性の写真ですから」
「いえ、そういう問題じゃないでしょ。何のためなの?」
すると突然、若菜は目にいっぱい涙を浮かべて叫ぶような口調で言った。
「だって、だって!片山先生があまりにもお気の毒で。あの若さでEDだなんて……」
「はあ?あなたね、EDって何だか分かってて言ってるの?」
「そ、それは、その……男性のあれが、その……」
「まあ、あなたたちぐらいの年になれば、それぐらいは知ってるか」
環は部屋にあったホワイトボードに「erection disorder」と書いた。
「これを略してED。日本語では勃起不全ね。確かに男性の性器が立たなくなる事だけど。でもなんで片山先生がそうだと言うわけ?そもそもどうしてあなたにそれが分かるんですか?」
「だって!あたしこの耳で聞いたんです!片山先生が職員室で……」
環は一度ホワイトボードに書いた文字を消し、今度はこう書いた。「武士の一分」」。
「九条院さん。これなんて読む?何年か前の映画で、うちの学校でも上映会やったでしょ」
「ええと……ブシ、ノ……イチブン?」
「そう。一分というのはね、プライドとか、信念とか、メンツとか、そういう意味なのよ。あの時片山先生は『男の一分が立たない』って言ってたの。つまり片山先生のメンツが立たないとか、そういう意味だったのよ」
「え?そうだったんですか。でも、よかった。じゃあEDじゃないんですね?」
「そうです。男の一分です。いいわね、あくまで『イチブン』であって、イチブじゃないのよ、『一部』じゃ!たとえそう思ったとしてもね、どうして直ちに、迷わず、何の疑いもなく、真っ先に、EDだという話になるんですか、あなたは?!とにかく、この写真は没収!いくら同性でも下手したら犯罪になるのよ、こういうのは。分かったら行ってよろしい」
「はい。すいませんでした」
若菜がドアに向けて歩き出すのを横目で見ながら、環は写真を点検した。
「それにしても、どこかで見たような柄の下着ね。ちょっと、何これ、更衣室の着替えのシーンって、どこでこんな物を撮影……ん?ちょっと、待ちなさい、九条院さん」
環が顔を上げた時、若菜の姿はドアの向こうへ素早く消えていくところだった。
「これ、全部あたしの写真じゃないの!いつの間にこんな物を……こら!待ちなさい!逃げるな!」
「あのね、九条院さん。いつかも言ったでしょ。何のためにこんな事を?」
「あ、いえ、今回はあたしのじゃなくて、ちゃんと大人の女性の写真ですから」
「いえ、そういう問題じゃないでしょ。何のためなの?」
すると突然、若菜は目にいっぱい涙を浮かべて叫ぶような口調で言った。
「だって、だって!片山先生があまりにもお気の毒で。あの若さでEDだなんて……」
「はあ?あなたね、EDって何だか分かってて言ってるの?」
「そ、それは、その……男性のあれが、その……」
「まあ、あなたたちぐらいの年になれば、それぐらいは知ってるか」
環は部屋にあったホワイトボードに「erection disorder」と書いた。
「これを略してED。日本語では勃起不全ね。確かに男性の性器が立たなくなる事だけど。でもなんで片山先生がそうだと言うわけ?そもそもどうしてあなたにそれが分かるんですか?」
「だって!あたしこの耳で聞いたんです!片山先生が職員室で……」
環は一度ホワイトボードに書いた文字を消し、今度はこう書いた。「武士の一分」」。
「九条院さん。これなんて読む?何年か前の映画で、うちの学校でも上映会やったでしょ」
「ええと……ブシ、ノ……イチブン?」
「そう。一分というのはね、プライドとか、信念とか、メンツとか、そういう意味なのよ。あの時片山先生は『男の一分が立たない』って言ってたの。つまり片山先生のメンツが立たないとか、そういう意味だったのよ」
「え?そうだったんですか。でも、よかった。じゃあEDじゃないんですね?」
「そうです。男の一分です。いいわね、あくまで『イチブン』であって、イチブじゃないのよ、『一部』じゃ!たとえそう思ったとしてもね、どうして直ちに、迷わず、何の疑いもなく、真っ先に、EDだという話になるんですか、あなたは?!とにかく、この写真は没収!いくら同性でも下手したら犯罪になるのよ、こういうのは。分かったら行ってよろしい」
「はい。すいませんでした」
若菜がドアに向けて歩き出すのを横目で見ながら、環は写真を点検した。
「それにしても、どこかで見たような柄の下着ね。ちょっと、何これ、更衣室の着替えのシーンって、どこでこんな物を撮影……ん?ちょっと、待ちなさい、九条院さん」
環が顔を上げた時、若菜の姿はドアの向こうへ素早く消えていくところだった。
「これ、全部あたしの写真じゃないの!いつの間にこんな物を……こら!待ちなさい!逃げるな!」