私立聖ブルージョークス女学院2
May
新緑が芽吹く5月の最初の頃、環の靴箱にピンク色の封筒が入っていた。中のこれまた乙女チックな柄の便せんには「明日の夕方5時、校舎裏の桜の木の下で待っています」と書かれていた。
環は「ハアッ」とため息をついた。噂に聞く女同士のラブレターというやつか、と思った。新任の環にさっそく目をつけた女生徒がいるらしい。環にはそっちの趣味はひとかけらもないので放っておこうかとも考えたが、世の中そんな甘いものじゃない事を教えてやるのも教師の務めだろうと思い直して、翌日その場所へ向かった。
それは校舎の裏手のやや広く空いた場所にある桜の木で、この木の下で告白したカップルは永遠に結ばれるという、よくある下らない都市伝説の場所だった。環が誰の姿も見えないので不審に思いながら木に近づくと、幹の反対側から川本愛梨という名の二年生の生徒がいきなり姿を現した。
背がすらっと高く、スレンダーな体つきでストレートロングの髪が風にはためく。確かに可愛い感じではあるが、あいにく環にそっちの趣味は微塵もない。
「あの、わたしのおねえさまに……」
と言いかけた川本愛梨に、環は0.5秒で即答した。
「嫌です」
「せ、先生!そんな最後まで聞きもしてくれないなんて!」
「あのね、この世の中にはそんな話は滅多にあるもんじゃないの。卒業してからちゃんと男性に興味持ちなさい、男性に!」
そう言って踵を返してすたすたと歩き去る環の背中に川本愛梨の半泣きの声が追いかけて来た。
「わたし、いつか絶対に先生を振り向かせて見せますから!」
「ああ、はいはい」
環は「ハアッ」とため息をついた。噂に聞く女同士のラブレターというやつか、と思った。新任の環にさっそく目をつけた女生徒がいるらしい。環にはそっちの趣味はひとかけらもないので放っておこうかとも考えたが、世の中そんな甘いものじゃない事を教えてやるのも教師の務めだろうと思い直して、翌日その場所へ向かった。
それは校舎の裏手のやや広く空いた場所にある桜の木で、この木の下で告白したカップルは永遠に結ばれるという、よくある下らない都市伝説の場所だった。環が誰の姿も見えないので不審に思いながら木に近づくと、幹の反対側から川本愛梨という名の二年生の生徒がいきなり姿を現した。
背がすらっと高く、スレンダーな体つきでストレートロングの髪が風にはためく。確かに可愛い感じではあるが、あいにく環にそっちの趣味は微塵もない。
「あの、わたしのおねえさまに……」
と言いかけた川本愛梨に、環は0.5秒で即答した。
「嫌です」
「せ、先生!そんな最後まで聞きもしてくれないなんて!」
「あのね、この世の中にはそんな話は滅多にあるもんじゃないの。卒業してからちゃんと男性に興味持ちなさい、男性に!」
そう言って踵を返してすたすたと歩き去る環の背中に川本愛梨の半泣きの声が追いかけて来た。
「わたし、いつか絶対に先生を振り向かせて見せますから!」
「ああ、はいはい」