私立聖ブルージョークス女学院2
 運動会の当日は抜けるような五月晴れだった。男女混合競技は無事に全て却下され、全てのプログラムは順調に進行して行った。午後になって借り物競走が始まり、観客席から引っ張り出される生徒の家族らしい人たちがちらほら出ていた。
 次の組が走りだし、一人の生徒が環に向かって猛然とダッシュして来た。それはこの前、環に愛の告白をしようとした、あの川本愛梨だった。環は一瞬逃げようかと思ったが、借り物競走の紙に書いてあるのがもし「新任の先生」とかだったら、彼女に可愛そうな事をする事になると思い直した。
 川本愛梨はやはり環に「先生、一緒に来て!」と頼んできた。まあ、しょうがないか、と思い環は彼女と手をつないで一番にゴールに飛び込んだ。綾瀬先生が紙をチェックする係だった。彼女は紙に書いてある内容を見てすぐに首を横に振った。
「これはだめよ、川本さんは失格」
「ええ!どうしてですか?」
「よく見なさい。紅茶を入れるアレの事よ」
「え、しまった!」
 環も横から首を突き出して紙に何が書かれているか見た。そこにはこうあった。
「ティーバッグ」
 環が憤然として傍らを振り返った時には、既に川本愛梨は10メートルほど向こうに走り去っていた。環は彼女を追いかけて走りだしながら怒鳴った。
「こら!間違えたのもさることながら、なんであなたが今日あたしが穿いているのがTバックだって事を知ってるのよ!これはあくまでスポーツ用の……じゃ、なくて、とにかく待ちなさい!」
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