甘い秘密をそっと教えて?

顔をあげるとコーヒーの乗ったトレイを持った樫原くんが夕陽を背に立っていた。

やっぱり。

なんかこのタイミングで会いたくなかった。


彼はアタシと目が合うとにっこりと笑って向かい側に座る。

なんでこのひと、
京都にいるのよ。

大学は神戸、
家は大阪って言ってたじゃないの。


そんなこと聞くのも面倒っていうか、
どうでもよくて
アタシは視線を彼からはずし、
また川の流れを眺める。


「ちょっとね、
京都に住んでる大学の友人に授業で借りてた資料を返しに来てたんだ」

「……」


「それでヒカリに会えないかなー、
って思ったらこの店のオープンスペースで座ってるヒカリを見つけた」

「……」

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