大切なもの
「沙和?」
「お、重かった…よね?///」
「なんだ、そんなことかよ」
「全然、重くなかった。むしろ、軽すぎ。
どっかで落としたんじゃねぇかって思ったくらい」


どこか、遠くに飛んでいっちまいそうで、怖かった。

「大げさだよ…」
「ハハっ。お前、熱ヒドイらしいから、早退だと。
保健室の先生は出張でいねぇから、勝手にいろいろ使った。
俺、お前の荷物取ってくるから、寝てろ」
「ありがと、樹…」

なぁ、もしも。

もし、もう少し俺が遅く保健室を出ていたら。
もし、もっと早く鞄を持ってきてやれたら。


お前は、あんな苦しい想い、せずにすんだのかな。


< 108 / 219 >

この作品をシェア

pagetop