大切なもの
「さっきのあいつらとの会話、聞こえなかったわけ?
俺に話しかけんな。俺、女が大嫌いなんだ」

「き、聞こえてたよ。嫌いかも、しれないけど…教科書。
教科書なきゃ、授業中不便でしょ?
…一緒に、みようよ」
「っ、」

「先生―!野上くんに教科書見せてあげるんで、席くっつけますね」
「おぉー、分ったぞ」

先生に言ってから、私は席をくっつけた。

「嫌いな女だけど、我慢してね♪」
「~~~っ。……サンキュ」

ボソッとホントに小さな声だけど、ちゃんと届いた。

「っ!いーえ♪」

きっと、野上くんは……


悪い人では、ない。



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