大切なもの
「…幻滅、したよね」

…理由がどうであろうと、

樹を利用していることに、変わりはない。

「バカだね、沙和は…!幻滅なんて、するはずないよっ。
あたしも…野上と似たようなこと考えてた。
颯太を好きでいる沙和は…幸せそうだけど…
辛そうなときのほうが多かった。
それなら、いっそ…違う人を好きになればいいのにって…
最低だけど、思ってた。
今日ね、ホントは…沙和、学校来ないんじゃないかって不安だったの。
だけど、笑顔で登校してきたよね。
全部、野上のおかげなんだよね。
沙和、沙和はさ…
笑顔でいれる人と、一緒にいたほうがいいよ。
野上だったら、安心だね…っ!」

ギュッと、抱き締められる。

「ありがとう、ゆっこ…ありがとう…っ」


ゆっこ…?
私が笑顔でいれるのはね、樹だけのおかげじゃないんだよ…?

こうやって一緒になって、自分の事のように泣いてくれる…

ゆっこがいたから。

ゆっこがいるから、私が笑顔だよ。


ありがとう、ゆっこ。



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