大切なもの
side樹


「お疲れ様、樹!」
笑顔の沙和だけど、いつもと全然違う。
「…何かあったのか?」
「…え?」
「俺をその作り笑いで騙せると思った?」
「つ、作り笑いなんて…」
「…颯太は騙せても、俺は……気づくよ。
苦しいなら、無理に笑うな。沙和、なにがあった?」
「樹、疲れてるのに…。泣いたら、迷惑になる…」
「バカ。お前はいっつも人のことばっかで、自分の事は後回し。
そんなとこも、好きだけど。俺の前でくらい…強がんな」
「樹…っ」
公園でも寄って、話そ。俺、ちょっと忘れもんしたから、さきに外出てろ?」

俺は急いで忘れものを取りに戻る。
ダッシュで沙和を追いかけると――……


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