大切なもの
沙和の目の前に、颯太と桜庭の姿があった。
「沙和ちゃんと付き合ってても、あたしのこと好きだった?」

桜庭がそう聞く。
「――……バカ」
俺はすぐに沙和の耳を塞いだ。
俺の耳に届いたのは…。

「俺は、沙和と付き合ってても…ずっと、亜弥のことが好きだったよ」

…沙和に聞かせなくてよかった。
そう思った。

「……沙和」
「いつっ…きっ…」


やっぱり、沙和の泣き顔を見るのは……嫌だ。


俺がみたいのは、沙和の笑顔。


だから、少しでも癒してやりたいんだ。

お前が、笑顔でいれるように。

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