大切なもの
「なんにもないよ??」

これ以上…ゆっこに迷惑なんてかけれない。

「あのさぁ、沙和。そんな辛そうな顔して、なんでもないわけないでしょ?
あたしを誰だと思ってんの。沙和のことなんか、なんだってお見通しなんだからね」
「っ、」

ほんと…ゆっこに隠し事はできないね。

「放課後…ゆっこ、時間ある?」
「あるよ。てか、なくても沙和のためなら空けるし」
「アハッ、ありがと、ゆっこ。放課後、聞いてね」
「うん」

―――……授業中、

隣には、当然だけど樹はいなくて。

なんだか、心にポッカリと穴が空いた感覚だった。

私は、一番遠い距離の小さくみえる樹の後ろ姿を……

みつめていた。

離れてしまった距離。

それを縮めることは…
もう、きっと……

できない。
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