大切なもの
「ごめんねゆっこ…。こんな話して…ごめんッ…」

どうして、謝るの……?
沙和は、悪いことなんてひとつもしていないでしょ?

「私……、なんでこんな…ッ…」

颯太と野上の間で彷徨っている沙和。
きっと、辛いよね…。
でもね、ひとつだけ、あたしに言えることがあったよ。
あたしは沙和の両手を包み込む。

「ねぇ、沙和。そんなに自分を追い詰めないでよ。
沙和がどんな答えを出しても、沙和のこと応援するから。
いつだって、沙和の味方だから。それだけは、分っててね」

「ゆっこ…っ、ぅぅ…」

ぽたぽたと、あたしの手に涙がおちる。

ギュッと、握り締める手に力を込める。


あたしにできるのは、

たった、これだけだ。


沙和の、味方でいること。


< 183 / 219 >

この作品をシェア

pagetop