大切なもの
「拾うの手伝ってくれてありがとう」
「いや。さっき、頭に本当たってたろ。大丈夫か?」
「うん。平気」
「これ、どこまで運ぶんだ?」
「図書室だよ。担任に押し付けられちゃってさ」
「ふぅん。…手伝う」
「へ!?って、樹全部持ってるっ」

樹は置いた本を全て持ってしまった。
「だ、大丈夫だよっ」
「俺が手伝いたいからいんだよ」
「うぅ…ありがとう。でも、私も少し持たせてよ」

樹から本を奪い、2人並んで歩いた。

…こうして2人で並んで歩くの、久しぶりだな…。

「…颯太とは、付き合ってんの?」
「えっ…?付き合って、ないよ?」
「…颯太と付き合わないのって、俺に遠慮してるから?」

……え?

「俺に悪いとか、そんなこと思ってんなら、それは沙和の勘違いだから。
俺のこと気にせず、颯太と付き合えよ」
「………」

ギュッと、喉の奥の方が詰まるように苦しい。

……どうして、そんな風に言えるの…?

「…遠慮なんて、してない…よ」
「そっか。なら、いい」

しばらく沈黙が続いた時――…

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