大切なもの
「沙和っ」
「颯太…」

颯太がこちらに駆け寄ってきた。

「樹も。何してんだ?」
「沙和が担任に運べって言われたらしいから手伝ってんだ」
「…ふぅん。樹、後は俺が沙和と運ぶよ」
「あぁ、じゃぁ頼むな」

そう言って、颯太は樹が持っていた本を持った。

「んじゃ、頼むな」
「おう」

そう言って、樹は元来た道を帰って行く。

「あ、沙和っ」

名前を呼ばれ、後ろを振り向くと――……

「額、ちょっと赤くなってる。ちゃんと後で冷やせよ」

そう言い、優しく笑うと去って行った。

樹――………。

胸が、とても苦しい。

この苦しみは、一体なんだろう。

「沙和………」

颯太に名前を呼ばれ、ハッと我にかえる。

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