大切なもの
そう言ってから何日が経ったかな…。

言おう言おうと思っているのに、なかなか言い出せない…。

「…わ?沙和ってば!」
「あ、ゆっこ…。ごめん、なに?」
「最近ボーっとしてるけど、大丈夫?」
「うん…。私、ヘタレだなって思って…」
「そんなことないよ。
…誰だって、失う覚悟なんてなかなかできないよ」

そう言うと、ゆっこは私の頭をポンポンと撫でた。

ゆっこには、“覚悟”のことは言ってある。


「はぁ……」

そんなため息は、チャイムによってかき消されたのだった。


< 200 / 219 >

この作品をシェア

pagetop