大切なもの
「…わかってたよ」
穏やかな笑みを見せながら、颯太はそう言った。
「…………え?」
「フハッ、わかってたよ。…そうじゃないかな、とは…思ってたんだ」
「じゃぁ…なんで…?」
どうして、なにも言わず…私のこと、待ってたの…?
「俺はさ、最低なんだ。
沙和の優しさに、つけこんでた。
なにも言わなければ、沙和は答えをださず、俺の傍にいるんだろうなって…。
ほんと、自分でも嫌になる」
「違うっっ!!颯太は、最低なんかじゃないっ!!
最低なのは…私なんだよ…。
颯太と樹の間でフラフラして…。
結局は2人を傷つけた…!!」
じわり、涙があふれる。
零れた涙を、颯太が優しく拭う。
「バカだな、沙和は」