大切なもの
side樹



家に着いたと同時に俺のケータイが鳴った。
「もしもし、田原どうした?」
「…っ、のが…み…っ」

声が震えている田原。
「田原、なにかあったのか?」
「さ…沙和が…っ…」
「っ、沙和になにかあったのか…!!??」
「…ヒック……、沙和が---…」
「……!!」

俺は田原からの電話を受けた後、荷物を玄関に放り投げ、無我夢中で走った。

信じたくない。
信じたくない言葉が、ずっと頭の中で再生される。

田原は、苦しそうに、泣きながら言った。


――沙和が、事故にあった。






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