大切なもの
校門まで来たところで、野上くんが口を開いた。

「家、どこ」
「え…?ここ真っすぐ行ったとこ…」
「送る」
「え、だいじょう「送る」
「あ、ありがとう…」
「行くぞ」

そう言って、歩き出した野上くん。
…どうして、送ってくれるんだろ?

―――………

「あ、ここ」
「…そ」
「送ってくれて、ありがとう。バイバイ野上くん」
「……なぁ」
「ん?」

野上くんは髪を掻きあげ…

「沙和…って、呼んでもいい?」
「…えっ?…いいよ?じゃぁ、私も樹って呼ぶね?」
「…おう。俺…お前なら、信じれる」
「え…?」

「俺、お前のこと…信じれる。女だけど、信じれる」
私はなんて返せばいいかわからなくて…

「あ、ありがとう?」
そう言うと樹は…

「フハッ」

また、笑うんだ――……。

「じゃぁ、おやすみ。沙和」
「おやすみ、樹」


女嫌いな、転校生、野上樹。


彼と分りあえた、

暖かい、春の夕方――……。

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