大切なもの
「野上くん、起きて?」

誰かが、俺の体をゆすり、俺は目を覚ました。
目の前には、市川沙和。

「…ん?なに…」
「あ、あのね。先生が…野上くんに校内案内しろって…」

はぁ?
普通そういうのって、委員長トカがするんじゃねぇの?
まぁ、いっか。
女嫌いのはずの俺が、そう思った。

「あのさ「…さっさと案内、してくんない?」
なにか言おうとした市川を、俺が遮った。
なんて言おうとしたんだ…?

「…え?」
え?ってなんだよ…。

「校内案内、すんだろ?」
「あ、うん!」

俺は静かな放課後の校舎を、市川と並んで歩いた。




< 29 / 219 >

この作品をシェア

pagetop