大切なもの
「…辛かったね…。ごめんね、辛いこと、言わせちゃって。
思い出させちゃって。
…けど、野上くんは、ちゃんと愛されているよ。
野上くんは、たくさんの人に支えられたから、今ここにいる。
それは、愛されていた証拠。
…野上くんは、1人じゃないんだよ?
転校してきたばかりで、今信じれる人、いないかもしれない。
だったら、これから見つけていけばいい。
私は、野上くんの嫌いな女の子だけど…、私は野上くんを信じてる。
ねぇ、野上くん。
辛かったら…泣いてもいいんだよ?」
「…っ」

どうして、こんな…
温かい言葉を言うのだろう…?

市川の言葉には、なんの偽りも感じられない。
すべて、本音で――……。

俺は、静かに涙を流した。


俺が、市川に自分の話をしたのは…


こいつなら、受け入れてくると思ったからかもしれない…。

こいつなら、信じれた。




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