大切なもの
「俺、お前のこと…信じれる。女だけど、信じれる」

コイツの前だと…。
沙和の前だと…どうしてか、口がすべる。

「あ、ありがとう?」
疑問形でそう言った沙和に俺は、笑った。

「じゃぁ、おやすみ。沙和」
「おやすみ、樹」


転校先の学校の、隣の席の女。
市川沙和。

夢で見た、一筋の光の先は……


もしかしたら、沙和だったのかもしれない…。


俺は、好きになったかもしれない――……。

いや、好きになった。

それは、前途多難な恋となるだろう…。


恋心を抱いた、暖かい春の夕方――……。


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