大切なもの
「…なに?」
私は笑顔を作る。

「…大丈夫?」
「大丈夫だよっ♪いのっちは心配性だなぁ!」
「なら、いいけど…」
「ほら、いのっちも男の子たちと喋ってきなよっ!
久々に会ったんだし、話たいでしょ?
それに私に付き合わせてるの、なんか申し訳ないしっ!」

「いのっち〜!」

「ほら、呼んでるよ!行った行った♪」
あたしはバンッといのっちの背中を叩いた。

「…あぁ」
いのっちは男の子たちの元へ行った。

「はぁ…」

亜弥ちゃんは一体…何をしたいの――…?

目に溜まった涙。
今にも、零れそうだよ…。

私は顔を隠すために膝に顔を沈めた。

――颯太、どこにも、行かないよね?




< 57 / 219 >

この作品をシェア

pagetop