大切なもの
「――…沙和?」

上から聞こえた声。
この声は――…

「っ、颯太…」
「どうした?具合悪いか?」
「ううん、何でもない。平気だよ」
「よかった。あ、これ。亜弥とコンビニ行った時買ってきた」

そう言うと袋の中からミルクティーを出した颯太。

「お前、好きだろ?」
「ありがとう」

ちゃんと、私を見てくれていた。
それが、すっごく嬉しい。

「颯く〜〜ん」

また、亜弥ちゃんがやってきた。

ギュッと服を強く握りしめる。
泣いちゃ、ダメ…!

「なに?亜弥」
視線を私から亜弥ちゃんに移す颯太。

「あのねっ」

亜弥ちゃんは颯太になにか喋っているけど…
私にはその声は聞こえない。
まるで、この空間に私がいないみたいで…

―――苦しい。



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