大切なもの
「沙和…。お前、何言ってんの」
「だって、こんなことくらいで泣くなんて…!」
「辛いから、泣くんだよ!涙が出るってことは、
沙和の心が悲鳴あげてるってことなんだよ!」
「好きな人の幸せ願うのがいいのに…、
私!全然願ってない…!
私を見てって思ってる…!
こんな自分…最低だよ!」
「お前はバカかよ…!」
そう言うと、さきほどよりも強く、強く抱き締めてきた。
「そりゃ、誰だって好きなやつの幸せ願うかもしれねぇけど…
一番大事なのは自分が幸せになることだろ…!
好きなやつに自分を見てほしいって思って、何が悪いんだよ!」
樹の言葉は、強くて、とても温かくて…
「沙和は、全然最低なんかじゃねぇよ!
沙和が最低なら、世の中みんな最低だ…!」
私の弱った心を、
癒していったんだ…。