大切なもの
ポツッ、ポツッと雨が降ってきた。
「嘘ぉ…」
じわり、目に涙が浮かぶ。
私はそれを拭うため、目をごしごしこする。
「颯太…。早く、来てよ…」
私の願いとは裏腹に、颯太は一向に姿を現さなかった。
次第に雨もザーザーと振り始め、容赦なく私を打ちつける。
グッと唇を噛み締める。
泣いちゃ、ダメだよ。
大丈夫、裏切られたわけじゃ、ない。
颯太は…
部活なんだから、仕方ない。
ホントに、
部活……?
ダメじゃん、信じなきゃ。
信じたいのに…
どうして、今。
亜弥ちゃんの顔が、
浮かんじゃうのかな…。