大切なもの
ついに、15時となった。

約束の時間から、2時間も経った。
颯太に電話をかけても、やっぱり繋がらなくて。
無機質な機械音だけが、鳴り響いた。

私は樹に電話をかけてみた。

【もしもし、沙和?どうした?お前、今デート中だろ?】
樹は、電話に出た。

「ね、樹…颯太、一緒じゃ…ない?」
【は?お前らデート中だろ?颯太と一緒じゃねぇの?】
「そう…た、来てない、の」

涙が流れる。
だけど、雨と同化して、どれが涙なのかすら、分らない。

【っ!沙和、お前今どこ】
「…○×の時計のとこ…」
【わかった】

そう言うと、電話が切れた。


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