大切なもの
雨が一層激しくなる。
遠くに、小さな影が見えた。
――……っ
「…沙和っ!!」
沙和が顔を上げる。
「っ、沙和!」
俺は沙和のもとに近づく。
沙和の瞳からは、涙が流れていて。
もう、涙が雨か分らないくらいで。
胸が、締め付けられる。
「…沙和、帰ろ」
「まだ、颯太…来てない…っ」
沙和はまだ、颯太が来ると信じてる…?
「沙和、颯太は来ねぇよ…!」
「来るもん!だって、颯太から誘ってくれたんだもん…!」
こんなにも、沙和に想われているのに。
颯太は、なにやってんだ…っ!
「沙和っ!」
俺は沙和の腕を掴み、立たせた。