大切なもの
教室に戻る間、少し頭痛がした。
やっぱり、完全には治ってないかぁ…。
なんて思いながら、教室のドアを開けると…
すでに、颯太が登校していた。

「沙和…」
「颯太…、おはよう」
ニコリ、笑ってみせる。
「昨日は…ごめんな」
「あ…うん。…なんで、来れなかったの?」
「…部活終わってすぐ…亜弥から、電話きて…」

ドクンと、胸が鳴る。
どうして…、なんで…
なんで、まだ亜弥ちゃんなの…?

「亜弥の声…震えてて。ほおって、おけなかった」

なんで亜弥ちゃんは…颯太に電話なんてするの?
…自分から、振ったくせに。

「亜弥さ、公園で泣いてて。告白、された」
「…え」
「ごめん、沙和。俺、やっぱりまだ亜弥のこと、忘れられない」

ちょっと、待って。
次の言葉が、想像できて、怖い…。

「亜弥と、ヨリ戻すことにした…。
沙和、俺と…別れて」

結局私は……


亜弥ちゃんには、勝てなかった。


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