大切なもの
「ちょ、颯太なに言ってんのよっ」
ゆっこが颯太に向かって怒りだす。

だけど私はゆっこの手を掴んだ。
「沙和…っ!?」
私は横に首を振る。
「ありがと、ゆっこ」

そして、颯太の目を見た。

「わかった…別れよ、私たち。
今まで、ありがとう。亜弥ちゃんと、今度こそ幸せになんなよっ!」

笑ってみせると…

「サンキュ、沙和!」

っ、颯太の笑顔、好きだよ…。
だけどね、今。
今、その笑顔を見るのは…辛いよ。

「ごめ、私…ちょっと他のクラスの友達のとこ行ってくる…」

そう言って、私は教室を出た。


――――……私たちは、終わった。


ううん、始まってすら、いなかったのかもしれない。


おかしいな…。
あんなにいっぱい泣いたのに。
なんで…まだ、涙でるかな。


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