龍とわたしと裏庭で①【加筆改訂版】
「それで、あの後あんなにわたしの機嫌をとったの?」


「そう。でもそれだけじゃなくて、君といると僕がここ何年も抱えてきた恨みや憎しみが薄れていった。

そして君が言ったんだ。『恨んだり嘆いたりするには人生は短すぎるし貴重すぎる』
って。

僕は――僕は思ったんだ。志鶴と一緒ならまともな人間に戻れるかもしれないって。

愛した人や敬愛してきた人を呪うのではなく、幸せを願えるような人間になれるんじゃないかって」


圭吾さんは言葉を切ってわたしの膝に頭を乗せた。


「志鶴に愛されたいんだ」


わたしは毛布の間から手を出して圭吾さんの髪に触れた。


「夜になると目が覚める」

圭吾さんはわたしの膝に頭を乗せたまま言葉を継いだ。

「志鶴は僕の心が生み出した幻で、この数ヶ月は夢じゃないのかって不安になる。君に会える朝が待ち遠しくてたまらない」


「圭吾さん」


「ん? 何?」


「わたしが必要?」

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