龍とわたしと裏庭で①【加筆改訂版】
「親父が――父が言ってました。恨んだり嘆いたりし続けるには、人生は短すぎるし貴重すぎるんですって」


圭吾さんはため息を一つつくと振り向いた。

階段の段差のせいで顔の高さが同じくらい。

片手が上がり、わたしの頬をそっと撫でた。

そのまま手はこめかみを滑って髪に指を差し込み撫で下ろす。

初めて圭吾さんに会った時と同じ。


「賢者の言葉だね」


寂しげな顔

ああ、圭吾さんはあの人を恨んでいるわけじゃない

ただ悲しいだけなのだ

以前は、仲のいい従兄弟だったのかもしれない。


「自分で思っているより人生はとっても短いから、一日一日を大切に生きなさいって――きっと父はママの事を考えて言ったんだと思う。若いうちに死んでしまったから」


圭吾さんは微かに笑みを浮かべた。


「君はいいな。純粋で、綺麗で。僕が失ってしまったものを持っている。分けてもらいたいくらいだよ」


分けてあげる

もしそんな事ができるのなら、いくらでも


二人の間に何があったのか分からないけれど、いつかはわだかまりが消えますように。

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