龍とわたしと裏庭で①【加筆改訂版】
「志鶴と一緒にいると、優しい気持ちになれるな」

圭吾さんは何かを振り払うように頭を振った。

「行こうか」


わたしはうなずいた。


「今日の帰りは迎えに来るからね」

「はい。でも、たぶん自分で帰れると思います」


昨日、家の近くのバス停を教えてもらっている。

学校のバス停は、校門を出たらすぐに見つかるだろう。


「僕もそう思うよ。でも明日からね」

宥めすかすような言い方だ。


わたし、そんなに頼りなく見えるのかなぁ


「大丈夫ですよ。今まで何でも一人でやってきましたから」


すると圭吾さんは、一瞬ものすごく嫌そうな顔をした。


「その話はまた今度。今日は仕事の予定を入れていないから、時間があるんだ。僕につき合ってくれない?」


頼み込むように言われて嫌と言えるはずがない。


『分かりました』と言うと、圭吾さんはホッとしたようだった。

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