龍とわたしと裏庭で①【加筆改訂版】
「お前は人見知りだからな……」

親父は諦めたように言った。

「仕方がないか」


「ちょっと待ってよ! 誰も行かないとは言ってないでしょ?」

わたしは慌てて言った。


親父に仕事を断ってもらいたい訳じゃない。


「少し――うん、いきなりだったから少し驚いただけ」


わたしは、オレンジジュースを飲み干した。


もしかしたら、今まで親父は何度も仕事を断って来たのかもしれない。


わたしのために


海外勤務なんて、親父にとっては、年齢的にいっても最後のチャンスだろう。


「いつ行くの?」


「三月末だ」


あと二ヵ月?!


もっと早くに言ってくれれば……

ううん、そうじゃない

伯母さんと話す前に、わたしに相談してくれてもよかったのに。


< 4 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop