龍とわたしと裏庭で①【加筆改訂版】
この二ヵ月間

いつかは社会人になって、知らない人の間に入って行くんだから、このくらい平気――って自分に言い聞かせてきた。


でも、今すごく後悔してる。


わたし、こんな格式高そうなお屋敷になじめるの?


逃げ出したい

逃げ出したい


親父は迷うふうでもなく歩いて行く。


そうか、親父はここに来たことがあるんだ

本当にここの家ってわたしの親戚なんだ


あれ? 玄関の引き戸が全開で開いてる??


「ごめんください。三田です」

親父が声をかけると、

「お待ちしておりました三田様」

と、即座に答える声がする。


恐る恐る親父の後ろからのぞき込むと、和服姿のお婆さんが三つ指ついてお出迎え

――って やっぱ無理!

絶対無理ぃ


本気で逃げ出しかけた時、誰かが後ろから腕を組んできた。


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