龍とわたしと裏庭で①【加筆改訂版】
「竜田川優月(ゆづき)さん。綺麗な方でね、圭吾は夢中だったのだけれど、父が亡くなって圭吾が忙しくなると自然に疎遠になってしまったのね。それで優月さんは別の方とお付き合いをするようになったの」


「圭吾さんがフラれたって事ですか?」


「結果的にね」



『他に好きな人ができたらどうするの?』

『その時はあきらめるよ』

――わたし、知らないで圭吾さんに残酷なことを言った……



「ご縁がなかったものと諦めてくれればよかったのだけれど、あの子はすっかり気難しくなったわ」

彩名さんは悲しそうに言った。

「無理もないわね。まだ若いのに父親を亡くして大学もやめて、家を継がなきゃならなくなったのだもの」


親を亡くすのは、とてもつらい。


「彩名さんだって大変だったでしょう?」


「ええ。でもね、わたしはただ悲しんでいればよかった。そのうち志鶴ちゃんにも分かると思うけれど、圭吾には家業の他に一族の長としての仕事もあるの。あの子はいつもピリピリしているようになったわ。家族ともほとんど顔を合わせない、食事も部屋で一人きり」


えっ?


「でも……だって……」


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