ママのバレンタイン
8
安宅亮。同じクラスの男の子。
片思いだと思っていた。
校庭で、雨の日も、かんかん照りの時にも砂埃にまみれてサッカーボールを蹴る綺麗な目に恋をした。
教室では間抜けでお調子者で、お勉強は私がいつも教えてあげていた。
安宅君は、私の教え方に一言も文句を付けずに素直に聞いてくれていた。私のことを怖い女だと教室中の男の子は言っていたから、てっきり安宅君も怖くて私に口答えできないのだと思っていた。
ある日の放課後、「新庄香奈は強い女だ、すげえ、かっこいい!」と言う安宅君の声が遠くから、偶然耳に入った。そばにいた男子は「あんな頭が良すぎて気の強い女は可愛げないじゃん」と言い返していた。「俺は好きだ、新庄香奈みたいな、強い女」安宅君はちょうど私に背を向けていたので、私が呆気にとられて立っているのに気付かなかった。男子は私に気付くと、にやにや笑っていた。
私は呪文をかけられた人のようになって動けなかった。
安宅君は、私に気付くと、覚悟を決めたのか、
「俺は、お前が好きだ」
と、言ってきた。
私は相変わらず、突っ立っていた。
「サッカーしかできない馬鹿男は好みじゃないだろう?新庄香奈はもっと理想が高いぞ、亮、あきらめろ!あきらめろ!」
私が何とも答えないでいるうちに、周囲の男子は「あきらめろ!」コールを繰り返して、冷やかしていた。彼は、真っ赤になったまま、私を見つめ続けていたが、ぷいっと怒ったように教室を出ていってしまった。
少女マンガのように、私もずっと好きだったの……と、どうして可愛く言えないんだろうと、情け無くなっていた。
自分の好きな男の子が、私を好きでいてくれる。
両思い?
信じられない……
自分の好きだと思う相手もまた、自分のことを好きだと思っていてくれる。
世の中には恋人や夫婦が当たり前のように、存在している。
羨ましいとは思ったが、私はどうやったら、恋人が出きるのか不思議だった。ましてや結婚なんて、何十年もずっと一緒に生活するなんて不思議を通り越して、謎の世界だった。
片思いだと思っていた。
校庭で、雨の日も、かんかん照りの時にも砂埃にまみれてサッカーボールを蹴る綺麗な目に恋をした。
教室では間抜けでお調子者で、お勉強は私がいつも教えてあげていた。
安宅君は、私の教え方に一言も文句を付けずに素直に聞いてくれていた。私のことを怖い女だと教室中の男の子は言っていたから、てっきり安宅君も怖くて私に口答えできないのだと思っていた。
ある日の放課後、「新庄香奈は強い女だ、すげえ、かっこいい!」と言う安宅君の声が遠くから、偶然耳に入った。そばにいた男子は「あんな頭が良すぎて気の強い女は可愛げないじゃん」と言い返していた。「俺は好きだ、新庄香奈みたいな、強い女」安宅君はちょうど私に背を向けていたので、私が呆気にとられて立っているのに気付かなかった。男子は私に気付くと、にやにや笑っていた。
私は呪文をかけられた人のようになって動けなかった。
安宅君は、私に気付くと、覚悟を決めたのか、
「俺は、お前が好きだ」
と、言ってきた。
私は相変わらず、突っ立っていた。
「サッカーしかできない馬鹿男は好みじゃないだろう?新庄香奈はもっと理想が高いぞ、亮、あきらめろ!あきらめろ!」
私が何とも答えないでいるうちに、周囲の男子は「あきらめろ!」コールを繰り返して、冷やかしていた。彼は、真っ赤になったまま、私を見つめ続けていたが、ぷいっと怒ったように教室を出ていってしまった。
少女マンガのように、私もずっと好きだったの……と、どうして可愛く言えないんだろうと、情け無くなっていた。
自分の好きな男の子が、私を好きでいてくれる。
両思い?
信じられない……
自分の好きだと思う相手もまた、自分のことを好きだと思っていてくれる。
世の中には恋人や夫婦が当たり前のように、存在している。
羨ましいとは思ったが、私はどうやったら、恋人が出きるのか不思議だった。ましてや結婚なんて、何十年もずっと一緒に生活するなんて不思議を通り越して、謎の世界だった。