24時間プロデュース【完】
男は真っ黒だった。
と言うのも、比喩的表現で。
男の顔はよく見えない。
頭から深く帽子を被っていて、黒いシャツに黒いズボン、黒いスニーカー。
左手首には黒いリストバンド。
全身を黒で固めていた。
やばい、益々怪しい人に見えてきた。
「あの、用が無いなら、
あたし、もう行きますね」
笑顔を作って、ゆっくりと後退る。
と、
「いちるちゃん」
目の前の男は、ぼそりとそう呟いた。