アカンサスの花冠
クラスメイト達がだんだんと帰りはじめて、ついには教室に一人になってしまったところで、漸く相模くんが姿を現した。
彼は申し訳なさそうな顔をして、頭を下げる。
「ごめん。用事は早く終わったんだけどさ、途中で佐々木先生に捕まっちゃって遅くなった。
本当にごめんな」
「いいよ、別に。気にしないで」
佐々木先生なら仕方ない。
言ってはいけないけど、あの人はときどき理不尽なことで嫌みを言う。
例えば、問の答えがわからないことを素直にそう言うと、それに対する常套句は
「思考停止をするな」とか、
「それは授業への反抗か?」というもの。
だからこそ、佐々木先生に対する生徒間の評判はすこぶる悪い。
それに加えて贔屓が過ぎるという事実も、評判の悪さに拍車をかけているのだろうというのが、率直な私の見解だ。
気遣った私の返答に、安心したように溜め息をつくと感謝の言葉を述べて隣の席に座った。
「あのさ、真面目に聞いてほしいんだけど」
「うん」
そう言うと彼は一息おいて、深く深呼吸をすると私の顔をじっと見て、驚愕の言葉を口にする。