【完】 After Love~恋のおとしまえ~


「どれにしようかなぁ」

その日、雑貨屋の店内で、私はしばし考え込んでいた。

サトシとペアのマグカップを買おうと思い、選んでいたのだ。

無地の淡いピンクと若草色のペアマグは優しい雰囲気で素敵だけれど、ビタミンカラーのチェックのマグも、可愛くて捨てがたい。

沢山ハートマークが描いてあるものだって、意外と悪くなかったりして。

もっともサトシはこんなの嫌がるだろうけど、と、ハートが飛んでいるマグカップを手に苦笑する。


私には、過去にも一人暮らしの男性との交際経験がある。

しかし、なぜかペアの食器を買おうという発想に至ったことはなかった。

そのため、恋人の部屋で使うおそろいの食器を買うのは初めての体験だ。


相手の好みと、自分の好みを考えて。

心を弾ませながら選んだ、初めてのペアのマグカップ。

店員さんが素敵に包装してくれたそれを持って、私はサトシの部屋へと向かった。

しかし、まさにその日、私はサトシの部屋でショックなものを目にしてしまうのだった。


それは、私ではない、他の誰かとサトシの、ペアのマグカップ……
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