【完】 After Love~恋のおとしまえ~
私の質問にサトシは一瞬ひるんだ様子を見せ、それから視線をそらすと、無言でテレビの画面に目を戻した。
黙り込んでテレビに見入るサトシは、黙秘するつもりだろうか。
「ねぇ、サトシってば」
マグカップでとんとんとサトシの肩を叩いてみると、サトシは重い口をゆっくりと開いた。
「それは……お土産でもらったんだよ」
「誰から?」
「……」
「ねぇ」
「……」
不自然な沈黙のあと、サトシは突然再び振り向いた。
「ほら、前に話した佳枝ちゃんだよ!」
佳枝ちゃんというのは今の病院でサトシが担当している入院患者で、小学生の女の子だ。
サトシによく懐いているという佳枝ちゃんは、前の病院でサトシに懐いてくれた女の子とどこか似ているそうで、サトシの方も、佳枝ちゃんのことはことさら可愛く思っていると聞いたことがあった。
「へぇ、佳枝ちゃんがくれたんだ」
「そう」
可愛い柄ね、と笑顔を見せたあとで、私は言葉を続けた。