【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「えっ」
「私ね、ディズニー大好きで、このデザインのマグカップがずっと欲しかったの」
「いや……ほら、うち、マグカップあまりないから、あったら便利だと思うんだよな。それに、ここに置いておけば友里が来たときに使えるし。だから、あの……」
「それなら大丈夫!」
私は、持参した紙袋を取り出した。
「ほら、ちょうどペアのマグカップを買ってきたところだったの! サトシの部屋ではこれを使えばいいでしょ? だから、代わりにこのディズニーのマグは私にくれない?」
「あ、あぁ……うん……」
明らかにサトシは困惑の表情をしていたけれど、そんなことには気づかないふりをして、私は彼の腕に手をかけた。
「やったぁ、ありがとう」
もしもこのマグカップが、「ももちゃん」と一緒にディズニーランドで買ったものだとしたら。
あるいは一緒に買ったものではなくても、「ももちゃん」から贈られたものだとしたら。
彼女がいざサトシの部屋で使おうとしても、なぜかそのマグは部屋から姿を消しているわけで。
「あのマグカップ、どうしたの?」
彼女からのそんな質問に、サトシはどう答えるのだろう。
きっとまた、わけの分からない、しょうもない言い訳をするのだろう。
たっぷりと、不自然なシンキングタイムを取ったあとで。