【完】 After Love~恋のおとしまえ~


いつも、サトシが当直のとき、私は彼の携帯に電話をかけることは絶対にしなかった。

病院内では携帯の使用は禁止だろうし。

当直室にいるときは出られるだろうけど、仮眠の邪魔はしたくない。

だから、私に「当直」とさえ言っておけば、サトシの行動はノーチェックとなる。

彼は、いくらでも浮気をする時間を作ることができるだろう。


だけど、私は信じたい。

かつてサトシが、患者の女の子との写真を手に

「この写真を見るたびに、立派な医師になりたいと思うんだ」

そう言っていた、真摯な姿勢を信じたい。

サトシは、仕事にかこつけた嘘だけは絶対につかない。

そう信じたいのだ。


静かに目を閉じると、私は脳裏から「ももちゃん」を追い払った。
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