【完】 After Love~恋のおとしまえ~
駅から少し歩いたところで、サトシが「そうそう」と私の方に振り向き、せっかくだから連れて行ってあげたいところがあると告げてきた。
是非にと喜んだ私を連れてサトシが向かった先は――
お寺だった。
それが、由緒ある有名なお寺ならまだ分かる。
けれどもサトシが案内してくれたのは、寂れた小さなお寺だったのだ。
わざわざ観光で来るほどの場所とはとても思えない。
すずめがチュンチュンと鳴きながら、青空を飛び交っている。
「あの……どうしてここへ連れてきてくれたの?」
遠慮がちに発した私の質問に、サトシはこんな理由を返してきた。
「この近くで観光出来そうなところ、ここくらいしかないからさ」
「観光?」
私がここまで来たのはサトシの部屋を訪問するためであって、別に観光なんてする必要ないのだけど。
しかし、せっかくサトシが気を使って連れてきてくれたわけだから……
「素敵なお寺ね」
社交辞令を口にしてみたところ、サトシがおもむろにこんな提案をしてきた。