【完】 After Love~恋のおとしまえ~



駅から少し歩いたところで、サトシが「そうそう」と私の方に振り向き、せっかくだから連れて行ってあげたいところがあると告げてきた。

是非にと喜んだ私を連れてサトシが向かった先は――

お寺だった。

それが、由緒ある有名なお寺ならまだ分かる。

けれどもサトシが案内してくれたのは、寂れた小さなお寺だったのだ。

わざわざ観光で来るほどの場所とはとても思えない。

すずめがチュンチュンと鳴きながら、青空を飛び交っている。

「あの……どうしてここへ連れてきてくれたの?」

遠慮がちに発した私の質問に、サトシはこんな理由を返してきた。

「この近くで観光出来そうなところ、ここくらいしかないからさ」

「観光?」

私がここまで来たのはサトシの部屋を訪問するためであって、別に観光なんてする必要ないのだけど。

しかし、せっかくサトシが気を使って連れてきてくれたわけだから……

「素敵なお寺ね」

社交辞令を口にしてみたところ、サトシがおもむろにこんな提案をしてきた。
< 13 / 595 >

この作品をシェア

pagetop