【完】 After Love~恋のおとしまえ~
あるときサトシと、過去に大ヒットした映画のDVDを観た。
豪華客船が氷山に追突して沈没する、緊迫した状況の中で繰り広げられる悲劇のラブストーリー。
私の一番好きな映画だ。
その映画の鑑賞中、船体に海水が入り込んで乗客たちが逃げまどうシーンの最中、サトシがこんな声を上げた。
「俺、分かったぞ! この船、ひょっとしたら沈没するんじゃないか?」
えっ、そりゃ沈没するわよ。
ここまで浸水していたら、どうみてもこの先、沈むとしか思えないでしょ。
そもそもそれ以前に、映画は沈没船を調査するシーンから始まったのだ。
その沈没船の乗客の中の生存者であるおばあさんが、沈没までのいきさつを語りだすところから始まった映画なのだから……
沈没するのは、分かりきっているよね?
サトシの発言の直後、画面の中ではまさしく船体が沈みはじめた。
すると、サトシは――
「ほら! 俺が言ったとおりだったろ!」
得意げに腕を組んだのだった。