【完】 After Love~恋のおとしまえ~




「――俺、もしかしたら次の異動の時に、東北の系列病院に転勤になるかもしれないんだ」

サトシがそう切り出してきたのは、食後のコーヒーを飲んでいるときだった。

「え……この春に東京に転勤してきたばかりなのに?」

「うん。医局の方にもいろいろ事情があるみたいで、打診されたんだ」

「そう……」

次の春がきたら、サトシが転勤してしまうかもしれないなんて。

そんなこと考えてもみなかった。


東北って……

行ったことないけど、遠いよね……


カタン、と心のシーソーは、悲しみの方に傾く。

しかし、黙り込んでしまった私に向かい、サトシはこんな言葉をかけてくれたのだった。

とても、とても、意外な言葉を。


「もし東北に行く事になったら、一緒に行かないか?」
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