【完】 After Love~恋のおとしまえ~



バレンタイン当日、私は仕事帰りに、予約しておいたケーキを受け取りに銀座の洋菓子店に駆け込んだ。

それから、サトシの最寄り駅へと向かう。

駅に着いて電話をすると、サトシはすでに帰宅していた。

「あのね、バレンタインのプレゼント、冷蔵庫に入れておいた方がいいものなの。だから今から、サトシの部屋に行くね。それを冷蔵庫に入れてから出かけよう?」


サトシの部屋に着くと、さっそく彼にバレンタインのプレゼントを渡した。

「へぇ、チョコレートケーキか。ありがとう、うまそうだな」

「そういえば、サトシ、誰かからチョコ貰った?」

「義理チョコならいくつか貰ったよ。そこのテーブルの上にあるやつがそう」

テーブルの上には、見るからに義理チョコらしきものがいくつか無造作に転がっていた。

――ももちゃんからは、貰わなかったの?

喉まで出かかったそんな言葉は、発せずに飲み込む。

「ケーキ、冷蔵庫に入れておくね。帰ったら食べてね」

「うん」

しかし、ケーキを箱に戻して、冷蔵庫を開けると――

見たくないものが、私の目に飛び込んできた。

サトシの冷蔵庫の中には、燦然と輝くゴディバの箱が入っていたのだ。
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